はじめに
Oリングは、油圧、空気圧、自動車、航空宇宙、電子機器など、さまざまな産業で広く使用されています。主な機能は、2つ以上の部品間にシールを形成し、液体や気体の漏れを防ぐことが目的です。しかし、Oリングが破損すると、漏れ、機器の損傷、さらには安全上の不具合を引き起こす可能性があります。そのため、Oリングの一般的な破損原因とその予防策を知っておくことは、シール性能の向上と寿命の延長に不可欠です。
1. 圧縮永久歪(Compression Set)

破損の症状
長時間の圧縮により、Oリングが弾力を失い、元の形状に戻らなくなり、シール性能が低下または喪失する。
考えられる原因
- 動作温度が高すぎる:高温によりゴムの劣化が加速し、Oリングが弾力を失う。
- 長時間の圧縮:材料の弾性限界を超える継続的な圧縮応力により、永久変形が発生する。
- 不適切な材料選定:使用環境の媒体や温度に耐えられない材料を選択した場合、性能が低下する。
予防方法
- 圧縮永久歪の少ない材料を選定する:FKMやHNBRなど、高温環境下でも良好な弾力を維持できる材料を選ぶ。
- 適切な圧縮率を管理する:Oリングの推奨圧縮率(一般的に15~30%)を維持し、過度な圧縮を防ぐ。
- 定期的な交換を実施する:Oリングの長期間の静的圧縮を避けるため、定期的に点検し交換する。
2. 硬化とひび割れ(Hardening & Cracking)

破損の症状
Oリングが硬化し、ひび割れや脆化が発生し、シール機能が損なわれる。
考えられる原因
- 長期間の高温またはオゾンの曝露:ゴムの劣化を加速させる要因となる。
- 耐熱性のない材料の使用:例として、NBRは高温環境で劣化しやすい、等。
- 強い酸化性化学薬品との接触:酸、アルカリ、洗浄剤などが材料の劣化を引き起こす。
予防方法
- 高温や薬品に強い材料を選定する:FKMやEPDMは、高温環境や化学物質に対して優れた耐性を持つ。
- オゾンや紫外線の曝露を最小限に抑える:Oリングを適切な環境で保管・使用し、これらの要因への曝露を減らす。
- 強い酸化剤との接触を避ける:耐薬品性のある材料を選択し、設計時に隔離対策を考慮する。
3. 押し出しとかじり(Extrusion & Nibbling)

破損の症状
Oリングが圧力によって溝から押し出され、エッジ部分が損傷したり裂けたりする。
考えられる原因
- シールギャップが広すぎる:Oリングが押し出される原因となる。
- システム圧力が過剰:材料の耐圧限界を超えると、Oリングが押し出されやすくなる。
- Oリングの硬度が低い:高圧環境に耐えられない。
予防方法
- シールギャップを適正に管理する:設計時に推奨基準(一般的に<0.15mm)に従い、適切なギャップを確保する。
- 高硬度のOリングを使用する:80ショアA以上の硬度を持つOリングを選択し、押し出し耐性を向上させる。
- バックアップリングを追加する:高圧環境では、バックアップリングを使用することでOリングの押し出しを防ぐ。
4. 摩耗(Abrasion)

破損の症状
Oリングの表面に顕著な摩耗痕が発生し、シール性能が低下する。
考えられる原因
- シールと金属表面の相対運動:継続的な摩擦による摩耗が発生する。
- 潤滑不足:Oリングと接触面との直接的な摩擦が増加する。
- 不適切な表面処理:Oリングの摩耗を加速させる。
予防方法
- 特殊配合の使用:内部潤滑剤などを含む材料を使用し、摩擦を低減する。
- 高耐摩耗性の材料を選定する:PU、HNBR Oリングなど、耐摩耗性に優れた材料を選ぶ。
- シール設計の最適化:不要な動的接触を最小限に抑え、表面を滑らかにすることで摩擦を減らす。
- 適切なシール部品を選定する:用途に応じて、低摩擦特性を持つOリングを選ぶ。
5. 化学的劣化(Chemical Degradation)

破損の症状
Oリングが膨潤、変形、または表面が侵食され、シール機能が損なわれる。
考えられる原因
- Oリングの材質が作動媒体と適合していない(例:NBRがケトン系溶剤と接触)。
- 強酸、強アルカリ、または溶剤に長時間さらされることで、材料が分解または膨潤する。
- 高温・高圧などの外部環境要因が化学反応を加速させる。
予防方法
- 耐薬品性のある材料を選定する:FKM、FFKM、EPDMなど。
- 作動媒体との適合性を事前にテストすることで、用途に適した材料を選択する。
- 保護コーティングやシール構造の改良を検討することで、化学薬品への直接曝露を最小限に抑える。
6. 膨潤と収縮(Swelling & Shrinkage)

破損の症状
Oリングが作動媒体を吸収して膨潤する、または溶剤の蒸発により収縮し、シール性能に影響を与える。
考えられる原因
- 材料が作動媒体を吸収し、体積が膨張することで、シール効果が低下する。
- 溶剤に長時間さらされることで、材料成分が失われ、収縮や硬化が発生する。
- 環境条件の変動により、寸法の不安定性が生じる。
予防方法
- 吸収性の低い材料を選定する:FKM、FFKM、PTFEなど。
- Oリングの液体への浸漬時間を制限することで、過度な膨潤を防ぐ。
- 用途に応じた適切なシールソリューションを選定する:追加の保護層や前処理技術を活用する。
7. 熱・圧力によるクラック(Thermal & Pressure Cracking)

破損の症状
Oリングの表面に微細な亀裂が発生する、または破裂し、シール機能が損なわれる。
考えられる原因
- 極端な温度変化により、内部応力が蓄積しクラックが発生する。
- システム内の急激な圧力変化がOリングの耐圧限界を超え、破裂を引き起こす。
- 材料が熱衝撃や圧力変動に耐えられない(例:NBRは低温環境で脆くなる、等)。
予防方法
- 耐高温性のある材料を選定する:FKM、HNBRなど。
- システムの圧力変動を管理することで、急激な変化による応力集中を防ぐ。
- 適切なOリングの取り付けを行うことで、組み立て時の不要なストレスを最小限に抑える。
8. 取り付け時の損傷(Installation Damage)

破損の症状
Oリングが取り付け時に裂ける、傷がつく、または変形し、シール性能が低下する。
考えられる原因
- 不適切な取り付け方法(過度な引き伸ばしや不適切な工具の使用)。
- 鋭利なエッジとの接触により、Oリングの表面が損傷する。
- Oリングのサイズや種類が適切でないため、取り付けが困難になり、シール性能が低下する。
予防方法
- 適切な取り付け工具を使用する:過度な引き伸ばしを防ぎ、潤滑剤を使用して取り付けを容易にする。
- 取り付け面のエッジやバリを確認する:Oリングの損傷を防ぐために、鋭利な部分を除去する。
- Oリングの寸法がシール溝と適合していることを確認する:過度な圧縮や変形を防ぐ。
結論
圧縮永久歪、硬化とひび割れ、押し出し、摩耗、化学的劣化、膨潤、熱クラック、取り付け時の損傷を含むOリング破損の8つの主要な原因を知っておくことで、効果的な予防策を講じ、シール性能を向上させ、寿命を延ばすことが可能です。
Oリングの選定、用途、または技術サポートに関する詳細情報については、GMORSまでお問い合わせください。当社の専門チームが、材料の推奨、技術サポート、シールソリューションをお客様のニーズに合わせてご提供いたします。標準製品からカスタムアプリケーションまで、GMORSは高品質なシールソリューションを提供し、信頼性と安定性のある機器性能を確保します。